これからの君と話をしよう

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この本がすごい!2013 フィクション編

 すごく今さらですが。そして需要あるのかわかりませんが。2013年に読んだ本のランキング発表を行いたいと思います。
 ノンフィクション編(小説、詩集など)とフィクション編(評論、学術書など)、どちらから発表しようか迷ったのですが、フィクション編のランキングは作成に時間がかかりそうなので、ノンフィクション編から発表してみることにします。
(じつはノンフィクション編は、タイミングを逃して2012年のものすら発表していないという……w 2013年のものを発表する際についでに発表しようと思っています)


 昨年、あまりフィクションは読めませんでした。去年も同じこと言っていた気がしますが、今年は去年よりもはるかに読めていません。
 いつもは、ランキングは1~10位まで作っているのですが、今年は、あまりにも読めていないので、フィクションは5位までの作成です。

 なお、このランキングは、「2013年に発売された本」ではなく「私が2013年に読んだ本」ですので悪しからず。

 では、いってみましょう!
 
5位 飯田雪子『ハロウィーンの魔法使い』(ヴィレッジブックスedge)

ハロウィーンの魔法使い (ヴィレッジブックスedge)

ハロウィーンの魔法使い (ヴィレッジブックスedge)

 昨年1月に一気読み。あぁ、このひとの描く世界観、やっぱり好きだなぁ。10年以上前からファンの作家さんです。
 読後、甘いお菓子を食べたくなって冷蔵庫に向かいました。紅茶とチョコレート、かぼちゃのケーキが似合いそうな1冊です。

 今回の作品は、主人公の灯里、道成たちよりも、脇役たちがほどよく個性が強くていい味を出している気がしました。特に、瑛司の野心家っぷりと千瀬の可愛らしくも筋の通った姿勢が好み。惜しむらくは、みんなに憧れられていたという耀子の出番があまりなかったことでしょうか。
 題材はクリスマスでも通用しそうな気もしましたが、服飾系の専門学校生の物語ということもあり、やっぱり、ハロウィンのほうが合っている気がしますね。
 あと、灯里たちが出逢ったマンションの庭園の描写が気になりました。これは映像で観てみたい気がします。


4位 加藤千恵『卒業するわたしたち』(小学館

卒業するわたしたち

卒業するわたしたち

 4年前から好きな作家さんの作品です。これは、13編から成る掌編集。「卒業」がモチーフの作品ですが、私は夏に少しずつ読み進めていきました。
 私は「卒業」にあまり思い出がないから楽しめないかも……と思いながらも手に取りましたが、想像していたものとはぜんぜん違いました。自動車学校からの卒業、恋のけじめ、アイドルの卒業公演などさまざまな角度から「卒業」を描いています。
 ひとつひとつの作品は短いですが、なんていうか、細部がすごくリアル。(加藤千恵作品を読むたびに思うんですが、このひと、日常の何気ない会話、特に今どきの大学生の飲み会の描写がとてもリアリティ溢れてると思うんですよね)
 出会いと別れが強調されており、そのあいだの時間はあまり描かれない作品などもたくさんありましたが、でもそれで不自然さを感じさせないのもすごい。そしてやっぱり、加藤千恵作品は終わり方の中途半端さが秀逸。このオープンエンディングっぷりがたまらないです!

 加藤千恵作品は、昨年は『映画じゃない日々』も読んだのでどちらを挙げようか迷いましたが、『卒業するわたしたち』のほうにボリュームを感じたので、こちらに一票です。
 そういえば、『映画じゃない日々』は昨年の3月上旬に読んだんだっけ。初めて加藤千恵作品を読んだのも2010年3月でしたし、基本的には、私は春にこのひとの本を読みたくなっている気がします。



3位 角田光代『三面記事小説』(文藝春秋

三面記事小説 (文春文庫)

三面記事小説 (文春文庫)

三面記事小説

三面記事小説

 秋に読みました。もともと角田光代の本は好きで、この本も積読中だったのですが、未解決事件やさまざまな事件への関心がいつにも増して高まってきたのをきっかけに読みました。
 実際に起こった事件をモチーフにした短編集。とにかく全体的に重い。暗い。
 素直に面白かったと思えたのは、ダントツで「ゆうべの花火」。不倫に嵌った女性と、インターネットで闇サイトを開いた男性、このふたりの人生がどう絡まりあっていくのか、とにかく目が離せませんでした。
 とにかく強烈でせつなかったのが、姉妹間の葛藤が描かれた「赤い筆箱」。よくこの事件からこの物語を思いついたなぁ、とも思いました。
 介護疲れを描いた「光の川」はただただ泣けました。回想シーンが悲しみを際立たせますね。純粋に悲しいお話でした。
 教師の給食に異物を混ぜた中学生たちの「永遠の花園」は、少女期特有のあれこれに私まで胸が焦がれました。「ビョーキちゃん」という女子生徒がいい味を出しています。

 どの作品も、ページの扉に、物語のモチーフとなった事件の記事が載っているのですが、小説を読んだあとに新聞記事に戻るとせつなさが倍増しました。
 それにしても、どの事件もほとんど知らないものだったことに、自分で少し驚いてしまいました。「光の川」のモチーフとなった事件だけは聞き覚えがあるのですが。(「ゆうべの花火」は日野OL殺人事件、「永遠の花園」は「流産させる会」事件かと思ったのですが違うのですね……)


2位 谷瑞恵『思い出のとき修理します』(集英社文庫)

思い出のとき修理します (集英社文庫)

思い出のとき修理します (集英社文庫)

 夏に青春18きっぷで名古屋から関東まで行ったとき、手持ちの本を読み終えてしまったので、柏のブックオフにてこの本を購入。帰りの電車の中で、ほろほろ涙を流しながら読みました。
 雑誌広告にもよく載っていたので気になっていたものの、いかにも本好きな人が好きそうな設定(都会から出てきたヒロインが古い商店街に住んで不思議な青年と出会う、「思い出のとき」を修理、etc……)で、おなかいっぱいになりそうな感じがして少し敬遠していましたし、実際、どこか既視感のある読み心地のような気もしたんですが、それでも強く印象に残ってしまった1冊です。連作短編集なので読みやすかったですし。
 ファンタジーオチなのかそうでないのか、結局よくわからないあやふやな作品も多かったですが、その危うさが「まぁ、こういうことがあってもいいよね」と、物語のいいスパイスになっていたんじゃないかと思います。
(ファンタジー設定よりも、どちらかというと、心理描写、心境の変化にちょっとついていけなかった感じがあるかも)
 メイクが落ちるから汗を拭うのを躊躇ったり、とか、女性ならではの描写も印象的です。ストーリーの冒頭に伏線っぽい描写があるところも個人的には好きです。伏線の回収に無理やり感を少し感じたりもしましたがw
 続編もあるみたいなので、気が向いたら読んでみようかと思います。

 この作品、「コンビニたそがれ堂」「ビブリア古書堂」「天国の本屋」シリーズが好きな人なんかは気に入るんじゃないかと思います。
「すこし、ふしぎ」な感じは、初期の飯田雪子作品っぽい気も。

 あと、私の中ではこの作品にはイメージソングがあります。
 夏川りみ「フルサト」。この曲を繰り返し聴きながら読んでいました。
 

1位 倉知淳『シュークリーム・パニック―生チョコレート―』(講談社ノベルス

 久しぶりに倉知淳のミステリ作品を読みたくなったときにこの本を見つけ、短編集ということと、表紙が可愛かったことに惹かれて購入。
 11月に、関西へ向かう電車の中で読みました。秋晴れの午前中に読むミステリー小説ってなんて気持ちいいんだろう。
 3つの作品が収録されている短編集なのですが、全体的にとってもとっても好みでした。どれも思いっきり味わいが違うのもいいです。
 特にお気に入りなのは、1話目の「現金強奪作戦!(但し現地集合)」。どこか伊坂幸太郎っぽいのが好みです。オチもいい。
 2話目の「強運の男」は途中まですごく引き込まれたけど、終わり方がやや消化不良な感じが残念。
 3話目の「夏の終わりと僕らの影と」は、高校生の男女が夏の思い出作りとして映画を撮る……というすごく青春っぽい設定で嫉妬せずに読めるか軽く不安でしたが、キャラの個性が強くて惹き込まれました。変わり者の女子・乾がいい味出していますね。時代設定や、舞台となった地域も個人的には好きです。

 圧倒的に好みだったのは1話目だけなんですが、「味わいの違う3つの作品を1冊で味わえた」という点で、私の中でのこの本の評価は高いです。
 この本は、続編(?)にあたる短編集も出ているみたいなので、そちらも近いうちに購入したいと思っています。


 ……いかがでしたか?
 こうして見てみると、私、ほんとに短編集が好きですねー。



 あと、漫画なのでランキングには含めませんでしたが、昨年読んだフィクション作品でかなり印象的だったものを1点紹介します。


 坂井恵理『ヒヤマケンタロウの妊娠』(Be・Loveコミックス)

 ネットで紹介されていてずっと気になっていましたが、この冬にようやく読みました。
「男性も妊娠するようになって10年、でもまだ妊娠する男性はマイノリティ」という社会を舞台にした、「男性の妊娠」をめぐる群像劇。思っていた以上に私好みの作品でした。
「男性も妊娠する社会だったら」という思考実験的な部分も興味深かったですし、ここでの「男性の妊娠」は、現実に存在するマイノリティについてのメタファーのようにも読めました。(実際、性同一性障害FTMの人が妊娠したら少し近い部分があるかもしれないな、なんて思ったり……)
 このテーマだったらもっともっと膨らませることができただろうな、とも思いましたが、これだけでも十分面白くて、ホロリとさせられました。コミックスのカバー裏のイラストも好きです。